このたび、伝統と名誉ある本学会の会長にご推挙頂き、重責に身の引き締まる思いです。会長就任に際し、OR学会に対する私の思いを述べさせて頂きます。
私は製鉄会社に入社し、長い間製鉄所の技術者として働いてまいりました。OR手法を取得したIE部門のメンバーと共に製造現場の種々の問題解決に取組んできました。高度なモデルを使ったわけではありませんが、いろいろな解析手法を駆使することで生産性向上、収益改善などに繋げることが出来ました。
さて、日本のOR学会の理論面での研究水準は世界的に見ても大変高いと聞いております。また、会長就任に際し改めてOR学会の論文誌を拝見しましたが、多様な分野に多様な執筆者の論文が掲載され、また英文誌にも多くの論文が掲載されていることに大変感銘を受けました。これは大いに誇るべきことで、今後もこの状況が続くことを願っています。
このように、OR学会は「問題解決の科学」として高い評価を得ているものと思います。一方、企業経営においては先見性が重要であり、「問題解決」以上に「問題発見」、「問題提起」が大切な場面が多くあります。21世紀はグローバルでダイナミックな時代であり、日々刻々と社会環境、経済環境が変化しています。その中にあっては、近い将来に発生するであろう問題をいち早く発掘し、スピード感を持って対処することが極めて重要です。
ORの原点は実学であり、実践の場でこそ実力を発揮せねばなりません。まさに“戦場”とも言える環境変化の時代において、ORはその原点に立ち戻り、実戦的かつ問題発掘に重きを置いた学問を目指していくことが重要であり、社会はそれを求めていると信じております。その意味から、日本のORは金融工学の分野では世界の草分け的存在であったにも係らず、実用面では米国の後塵を拝し、結果的にリーマンショックを招いたことは大変残念に思います。
近年、コンピューターの飛躍的な進歩により、複雑なモデルも比較的身近なものとなりました。しかしながら、そのモデルを何に活用するのかという議論が十分ではないような気がします。そのことは、研究目的が書かれていない論文が多いことにも現れていると思います。モデルの使用目的、活路を常に模索し、実際に使ってみてその有効性を検証するサイクルが必要ではないかと考えます。
スマートなモデルに焦点が当たりがちですが、実際の社会の問題からは、モデルで表現しきれない、いわゆる泥臭い部分を切り離すことができません。「実学」たるORこそ、ここに踏み込める唯一の科学であると信じます。幸い、OR学会は大学の学部学科、企業の垣根が無く、広範囲な分野のメンバーと議論できる環境にあります。産学連携をこれまで以上に強化し、企業の学会への参加を増やし、ORの有用性を評価していくことが重要と考えます。
以上が私の思いです。会員の皆様とともに、同じ目標に向かって進んで参りたいと思いますので、皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。 |