知財立国への制度改革とその成果

馬場錬成
  あらまし 2002年3月から始まった小泉内閣の「知財立国」政策は、知財分野にとどまらず、国民の生活様式や国民意識、社会構造、企業と大学の経営、研究・開発、産業構造まで「国のカタチ」を変える大改革である。これまで21本の法律を改正し、多くの成果を出してきたがまだ道半ばである。法学一辺倒できた日本の国の制度作りに、初めて理系人材が大きな役割を果たす時代になったが、まだ時代認識を明確に捉えられない人が多い。知財改革に後ろ向きの「抵抗勢力」を断固として排除しなければ、日本の知財改革は中途半端になってしまうだろう。重要なことは、時代認識を明確に持ち、国民自身が責任を持って改革することである。
  キーワード 知財立国、国のカタチ、知財推進計画、知財高裁、大学知財本部、模倣品対策、コンテンツ・ビジネス、知財人材
     
知識社会と知的財産 生越由美
  あらまし 近年、職務発明訴訟、アイコン特許訴訟など、「知的財産」に関する話題が増えている。これは知識社会が到来し、特許やブランドなどの知的財産の価値がはっきりと認識されたためである。貿易ルールも変わり、多くの国が知的財産を守らなければならなくなった。IT技術やインターネットの普及に伴い、売買の対象がモノ(音楽CDなど)から知的財産(音楽情報など)に変化している。このような環境の下で国際競争力を高めるため、企業は知財戦略を大きく変更し、各国政府は知財改革にまい進している。本稿では、知識社会と知的財産の関係、知的財産の定義と性質、知財ビジネスや知財改革の動きを報告する。
  キーワード 知識社会、知的財産、国際競争力、情報、知財戦略
     
ライセンス・ビジネスと技術者の報酬 高橋伸夫
  あらまし 知的財産権の評価については、経営学の立場から、実際の企業行動と市場取引に関する知見に基づき、ライセンス・ビジネス的な枠組みを提示することができる。しかしこのことは同時に、技術者が金銭という同じ土俵の上で会社側と報酬の金額を争っていたのでは、ライセンス・ビジネスの現実に打ちのめされることも意味している。技術者にとって望ましい成果配分とは何か。職務発明家が追い求めている成果とは何か。それが会社側が求めている成果とは異なる種類のものであるというところにこそ、両者の共存共栄の可能性が見出されるのである。
  キーワード ライセンス・ビジネス、青色LED訴訟、成果主義
     
知的財産権法制度をめぐる国際的課題と動向
植村昭三
  あらまし 19世紀末に始まる知的財産制度の国際潮流を「BIRPI時代」、「国連・WIPO時代」、「GATT/WTO-WIPO時代」、そして「マルチプル・フォーラ時代」に区分し、それぞれの特徴を概説する。その上で、今日、国際社会が直面している国際的問題の中から、開発問題、「遺伝資源・伝統的知識・フォークロア」問題、公衆衛生問題、情報社会問題、特許法調和問題、商標法・意匠法調和問題、著作(隣接)権法問題を概説する。諸課題についての国際コンセンサス形成には、各国レベルでの政府のみならず産業界、学者等の横の連携、説得力あるリサーチが重要である。
  キーワード 知的財産、WIPO、WTO、開発
     
研究方法に関する特許権の行使 渡部俊也
  あらまし 研究方法に特許権が存在した場合、大学などでの研究活動が訴訟の対象になったり、差し止められるかもしれない、という問題がここ数年議論されてきている。アカデミアの自由な研究活動は、科学技術基本計画の目的である科学技術によるイノベーション創出の基盤的な条件である。このような問題が現在どのように扱われているのか、そして今後アカデミアに所属する各人がどのような課題に直面することになるのかについて解説する。
  キーワード 研究方法、特許、リサーチツール、ライセンス、学問の自由