不確実性下における調整費用を考慮した設備投資

辻村元男

  あらまし 本稿では、事業の拡大のために、設備の拡張を計画している企業の問題を考察する。設備を導入するには、設備の購入費用に加え調整費用がかかる。これらは埋没費用となり、投資に対する不可逆性が存在するとする。また、導入される設備によって作られる財の価格は不確実であるとする。このような設備投資に関する不確実性、不可逆性を考慮した企業の問題を、リアルオプション・アプローチによって分析する。形式的には、企業の問題は、設備を導入する最適な時刻を求める最適停止問題として定式化される。また、数値例を用いて比較静学を行う。
  キーワード リアルオプション、設備投資、最適停止
     
リアルオプションの発電事業への適用 高島隆太
  あらまし 近年、リアルオプション理論の枠組みを適用した発電事業の評価に関する研究が盛んに行われている。これらの研究において、電力価格や燃料価格の不確実性を考慮した発電プラントの建設や廃止問題、起動・停止問題の評価を行なっているものが多数見受けられる。また最近では、リプレースや代替プラントの選択問題など、より現実的な問題を分析するような研究や、電力価格分析を行いリアルオプション評価に適用するような研究が行なわれている。そこで本稿では、原子力発電プラントのリプレース評価に関する研究と、電力価格分析によって得られた価格モデルを用いて発電プラントの起動・停止問題を分析した研究を紹介する。
  キーワード 発電プラント、リプレース、起動・停止、電力価格、不確実性
     
なぜリアルオプションとゲーム理論か
渡辺隆裕
  あらまし リアルオプションは不確実性を外生的な確率過程で表現するが、投資の意思決定はライバル企業など他の意思決定者の行動にも影響を受ける。このような複数の意思決定者を考慮し投資価値を測るにはゲーム理論を用いて分析した方がよい。このような観点からリアルオプションとゲーム理論を合わせた分析が、近年増加している。本稿はこのようなリアルオプションにゲーム理論を取り入れることに関し、定量的な分析への実現可能性と課題を考察し、その例として代表的な研究である投資のタイミングゲームに関して紹介する。
  キーワード リアルオプション、ゲーム理論、定量分析、ナッシュ均衡
     
企業内の利害対立と最適投資タイミング
芝田隆志、西原 理
  あらまし 本論文では、経営者が株主よりも多くの情報を保有すると仮定し、その結果、情報の非対称性が両者間に利害対立を生じさせ、企業の最適投資タイミングに歪みを発生させることを示す。また、経営者の偽の申告の摘発に対する罰金付与の有効性について考察し、情報の非対称性下においては、情報開示による株価ジャンプ、不確実性の増大による所得移転、等が発生することについて論じる。
  キーワード リアルオプション、情報の非対称性、インセンティブ設計
     
リアルオプションと資金調達
西原 理、芝田隆志
  あらまし 近年、金融オプションの価格付け理論を応用したリアルオプションモデルによって、企業の最適投資戦略や投資プロジェクトの価値を分析する研究が数多くなされている。企業の投資問題を考えるとき、コーポレートファイナンスにおける重要な研究課題である最適な資金調達方法や資本構成といった問題も、同時に考慮されなければならない。本稿では、企業の最適な投資タイミングと負債発行を導出するリアルオプションモデルを説明する。特に、このモデルで企業の資金制約が投資戦略やプロジェクト価値に与える影響を明らかにする。
  キーワード デットファイナンス、最適資本構成、レバッジ、投資ゲーム、preemotion
     
リアルオプション理論によるM&A分析の展望
後藤 允
  あらまし 本稿は、件数と総額が増加の一途をたどるM&A(企業買収合併)を分析対象とする。M&Aは金融経済学においても重要な研究主題であるが、特に買収機会とオプションとの類似性から、リアルオプション理論を用いた分析が有効であり、多くの研究がなされている。本稿では、M&Aにおける重要な主題であるアブノーマルリターンと買収防衛策を分析した研究を紹介し、今後の発展に対する展望を述べる。
  キーワード リアルオプション、M&A、アブノーマルリターン、買収防衛策