イノベーションとマネジメント 二宮 清
  あらまし 科学技術の急速な発展とグローバル化の普及等により、政治・経済・社会のいずれにおいてもそれぞれの活動は様々な矛盾を整合する必要に迫られている。矛盾の背景には市場原理VS人間原理の葛藤がある。その解決のためには、既存の組織・技術・環境に革新的な変化(イノベーション)を引き起こし、新しい価値を創出していくことが重要である。本稿では、まず「イノベーションをいかにして引き起こすか」と「その推進の基本的心構え」について論じ、次にこの考え方を基に研究開発におけるイノベーションとマネジメントを技術経営(MOT)の観点から述べる。
  キーワード イノベーション、マネジメント、知識の進化、情報共鳴、研究開発マネジメント、技術経営(MOT)、イノベーションのジレンマ
     
先行技術開発における研究開発のマネジメント 菰田卓哉
  あらまし 先行技術は将来の商品・事業の種を仕込むステージであり、その舵取りは製造業における研究開発マネジメントの中でもきわめて重要である。特に、研究テーマ選定、目標の設定、投資リソースの決め方など考慮すべき点が多々ある。中でも、成功のための日常のマネジメントの仕組みと、人材確保・育成をどのように遂行するかが重要なキーとなる。さらに、継続的に売り上げ増につながる新商品をタイムリーに出していくためには、将来を見据えた研究テーマの発見および仕入れのためのマネジメントの仕組みも重要である。これらを総合的にコントロールすることで、新商品につながる先行技術を切れ目なく創出できるものと考える。
  キーワード 先行技術開発、仮説検証、SAT10、技術者の心構え
     
ものづくり安全技術(Safety Technology)における研究開発マネジメント 藤田俊弘、柿崎晶子
  あらまし 日本のものづくりを取り巻く環境は、製品技術や生産技術の高度化が進むとともに、BRICsと呼ばれる新興産業国の出現等によりグローバル競争はより一層加速している。さまざまな製品事故や、工場における爆発事故や産業事故等の頻発により、日本製品の高品質、安全性への陰り、そして本質安全設計や安全防護による真の意味での生産現場における安全構築の必要性が急速に高まってきている。すなわち「安全なものをつくる」と同時に「安全にものをつくる」ことが非常に重要であり、ここでは具体例を含めてIDECにおけるものづくり安全技術(ST)の研究開発マネジメントについて紹介する。
  キーワード ものづくり、安全技術、国際規格、3ポジション、イネーブルスイッチ
     
新たなコンセプト創出をめざす研究開発マネジメント
白井正明
  あらまし 研究開発マネジメントにおいて最も重要なことは、基本的な理念や姿勢を明確に示すことである。JFEグループの研究開発会社であるJFE技研では、理念としての存在理由に基づき、保有する“要素技術”と研究委託元である事業会社の技術分野・商品分野の技術との関連を明確化した上で、さらに分野横断型で全体最適化を目指す“包括技術”領域も設定し、戦略的にコンセプト創出を行うことを基本姿勢としている。研究開発成果の評価の考え方も研究所の姿勢につながるものであり、定量化しやすい項目だけに片寄ってはならないと考えている。
  キーワード 研究開発、技術経営、MOT、JFE、存在理由、研究戦略、要素技術
     
多様性を力に変える−基礎研究所マネジメント奮戦中− 外村佳伸
  あらまし 本稿では、筆者が基礎研究をマネジメントするようになってから感じたこと、考えたこと、マネジメント上で工夫していることなどについて、現在進行中の浅薄な経験であることを省みず、多少でも参考になればとあえて述べさせていただく。特に、基礎研究所に特徴的な、個性的で多様な研究者の力を、「研究は人」を基本的な考えに置きながら、いかに組織としての大きな力に変えていくかを主要な課題としている。
  キーワード 基礎研究、多様性、マネジメント、研究開発
     
信託銀行における金融工学の利用 松田雄司
  あらまし 本稿で紹介させていただくのは、三菱UFJ信託銀行100%出資の金融工学専門の研究所のMTEC(正式社名「三菱UFJトラスト投資工学研究所」)である。今や日本の金融機関にとって、金融工学は業務上不可欠で重要な分野となっている。筆者の銀行員としての体験に基づき、銀行ビジネスが変質する過程で銀行が金融工学をどう取り入れ・活用してきたかを紹介させていただく。加えて専門研究機関である弊社の果たしてきた役割ならびに今後のマネジメントの課題を紹介したい。
  キーワード 金融工学、財政基盤、基礎研究枠
     
R&D投資のリアルオプションモデル 西原 理
  あらまし R&Dのマネジメントにおいて、投資プロジェクトの価値評価や投資戦略の決定は、重要な問題である。近年、価値評価や意思決定を行う新しい手法として、金融オプションの価格付け理論から派生したリアルオプションアプローチが、注目を集めている。そこで、本稿では、リアルオプションアプローチを用いたR&D投資プロジェクトの評価と意思決定について説明する。特に、R&D投資の特徴である、「段階的な投資」、「技術的な不確実性」、「ライバル企業との競争」に着目したリアルオプションモデルを紹介する。さらに、リアルオプションアプローチを現実の問題に適用する際の手順や留意点についても述べる。
  キーワード R&D、リアルオプション、段階的な投資、技術的な不確実性、競争
     
中国における業務マネジメントの基本点 北村 豊
  あらまし 中国において業務マネジメントを適切に実施することは、比較的順法精神に富む日本人にとって多くの困難を伴うものである。本論文では、中国における業務マネジメントの中で問題となった数多くの実例を分析し、そこから問題を未然に防ぐ方法を導き出している。このような問題の発生する確率が高いのであれば、あらかじめそれに対して適切な措置をとるのは業務を順調に実施するためには欠かせない視点である。このような発想は孫子の兵法を取り上げるまでもなく、オペレーションズリサーチの原点ではないだろうか。本論文が、中国で事業を行っている多くの企業にとって、適切な業務マネジメントを遂行できるための何らかのヒントになれば幸いである。
  キーワード 業務マネジメント、脱法行為、役得、コンプライアンス、模造