エネルギー市場における自由化の進展と金融技術の活用

山本 毅、安田茂史、後藤 毅

  あらまし 世界のエネルギー需要が堅調に拡大する中、原油や天然ガス市場では、価格が急速に上昇してきており、様々な産業に大きな影響を及ぼしている。海外における規制緩和の進展と市場メカニズムの導入によるエネルギー分野の環境変化は、事業の経営に大きなインパクトを与えるとともに、ORや金融工学をいかに活用していくかが企業の競争力を左右することとなっている。本稿では、事業会社にとって経営課題となりつつあるエネルギー市場への対応およびリスクマネジメントの手法について考察していく。
  キーワード エネルギー市場、デリバティブ、リスクマネジメント、ヘッジ手法
     
LNG取引におけるオプション価格理論の活用 河本 薫、津崎賢治
  あらまし エネルギーの価格変動は激しく、エネルギー事業の収益は不確実性が高い。一方、オプション価格理論は、狭義には金融商品としてのオプション価格を評価する理論であるが、広義には将来価格により決まる不確実なキャッシュフローの市場価値を評価する理論である。欧米の先駆的なエネルギー事業者は、この観点から設備や契約が生み出すキャッシュフローの市場価値をオプション価格理論で算出し、それに基づき投資判断や契約交渉を行う。本稿では、LNG取引におけるオプション価格理論の活用例として、LNG購入契約の基本条件である価格フォーミュラおよび引取量柔軟性の市場価値を評価する方法を示す。
  キーワード LNG契約、オプション価格理論、市場価値、スウィングオプション
     
エネルギー産業の新しい展開と価値創造型市場ネットワーク 高森 寛
  あらまし エネルギーにかかわる産業取引の市場化・自由化に関連して、いくつかの問題や課題を概観する。エネルギー・セキュリティについて、各種エネルギー源の間の代替性、相互補完性を確保するように、柔軟性のある産業・経済の構造に転換していくために、インフラの整備、特に、制度などを含むソフトなインフラの整備が重要である。省エネへの課題については、市場の原理と価格メカニズムをテコにしての産業取引の舵取りをする方策が価値創造的な道である。エネルギー問題は、環境問題と切り離せない時代になってきた。しかし、市場と競争の原理の枠組みから、環境は外部経済の問題であり、これらを調和させるためのソフトインフラのデザインが望まれる。市場ネットワークのモデルと、市場‐環境の調和のモデルを示す。
  キーワード エネルギー・セキュリティ、市場の原理、省エネ、産業と環境の舵取り、ソフトインフラ・デザイン
     
第4次電気事業制度改革とJEPX取引分析の展望
山口順之
  あらまし 今回の第4次電気事業制度改革は、「安定供給」、「環境適合」ならびに「競争・効率性」という3つの政策的課題を設定し、同時達成を図っていくことを意図している。この中で、取引量が徐々に増えつつあるJEPXについては、さらなる取引の活性化の観点から「時間前市場の創設」などが提案されている。一方、これまでのJEPX取引の研究をサーベイすると、時系列分析や需給曲線の推計などの取り組みが見られ、一層の研究の発展が期待される。今後の展望としては、時間前市場と「CO2フリー電力」の取引が、既存の諸制度や周辺の動きなどを含めて、特に注目される。
  キーワード 電力自由化、日本卸電力取引所(JEPX)、電力価格
     
電力取引と供給力の確保−米国北東部における
 容量市場導入の経緯と最新動向−
服部 徹
  あらまし 海外では、開かれた市場で卸電力が取引されるようになって久しい。ところが、電力そのものの市場価格だけでは、必要な設備投資のインセンティブを与えられず、安定供給のための十分な設備容量の確保に懸念が生じている。米国の北東部では、卸電力を調達する小売供給事業者に、あらかじめ一定の設備容量を確保する義務を課し、その過不足を調整するための容量市場が設立されている。容量市場は、設立当初から、様々な問題を指摘されてきたが、制度改革も進んでいる。本稿では、このような電力取引に伴う容量市場導入の経緯を振り返るとともに、米国北東部の事例から、その制度設計の課題について解説する。
  キーワード 電力取引、容量市場、供給力、安定供給
     
卸電力取引所の創設がもたらす電力供給プレミアムの評価 宮口直也、大野高裕
  あらまし 電力の非貯蔵性という特徴から、電力の消費は同量の発電・送電・配電といった電力供給設備の使用を意味している。わが国でも日本卸電力取引所での電力取引が開始され電力の指標価格が形成されることとなった。これにより、これまでコストセンターであった発電設備をプロフィットセンターとして捉えていくことが可能となり、取引契約、投資・廃止評価等にあたり新たな可能性が高まっている。本稿では、これらについて考察を加えるとともに、将来時点の電力供給を約束する契約は発電設備の容量を予約することに相当するとの観点から、設備使用の権利に対するプレミアムの在り方について考察していく。
  キーワード 電力自由化、容量価値、リアルオプション、金融工学