鉄道のスケジューリング問題:難しさと面白さ

富井規雄

  あらまし 本特集号全体に対する基礎知識を与えるために鉄道のスケジューリング問題を概観し、その難しさと面白さ、研究開発の状況について述べる。
  キーワード 鉄道、スケジューリング、運行計画、最適化
     
鉄道の通勤利用モデルとソフトな混雑緩和策 田口 東
  あらまし 東急田園都市線では2007年春より、朝の急行を各駅停車に格下げした。混雑による遅れを緩和する目的である。田園都市線の混雑のハードさは“鉄”にはよく知られており、某メーカが、電車内でPC液晶が破損した原因を調べたところ、想定をはるかに上回る圧力が測定され、設計を変更したという話もある。社会環境を考えると、路線の増設などのハードウェアではなく、電車の利用方法というソフトな解決策を考えるのは合理的であろう。そのためには、電車の運行を詳細に記述できるモデルが重要である。本文では、時空間ネットワークと応用例を紹介し、乗り換え案内だけではない、計画の分野への可能性を述べる。
  キーワード 鉄道網、通勤移動、時刻表、混雑、遅れ、時空間ネットワーク、大都市交通センサス
     
鉄道の運用計画問題に対する 
  整数計画法によるアプローチ
今泉 淳
  あらまし 鉄道には各種資源の割り当て問題、特に時系列的な割り当てを考える必要がある計画立案が数多く存在し、とりわけ、列車の運行を行うに当たっては車両や乗務員の割り当てが不可欠である。この計画立案においては、これらの有限な資源をその使用条件を守りつつダイヤに示された全列車に対して割り当てねばならないが、従来そこでは人手に頼っている部分が大きかった。しかし、近年になって次第に数理技術を用いた方法に移行しつつある。本稿では、乗務員や車両の運用計画の作成(スケジューリング)に対する整数計画法による考え方や試みを、筆者が最近係わったものを含む既存の研究に基づき概説する。
  キーワード 鉄道、車両運用、乗務員運用、整数計画法、スケジューリング
     
列車ダイヤ乱れ時の再スケジューリングアルゴリズム
平井 力
  あらまし 列車ダイヤに乱れが生ずると、たいへん多くのお客様に影響が生ずる。列車の運行を管理する司令室では、運休や、到着番線の変更など、列車ダイヤに対して一連の変更を加えることで、その影響を最小限にする努力がなされる。運転整理と呼ばれるこの業務を支援するため、各鉄道会社では専用のコンピュータシステムが導入されつつあるが、ダイヤ変更の内容を決定しているのは、実は、指令員と呼ばれる人間である。運転整理の根幹であるこの判断を、コンピュータが自動的に提案することはできるのであろうか。本稿では、この運転整理案の自動作成に関する研究動向と、筆者らの取組みを紹介する。
  キーワード 鉄道、ダイヤ乱れ、運転整理、シミュレーション、スケジューリング
     
列車ダイヤ乱れ時の乗務員運用整理支援 辺田文彦、相馬 眞、若井雅宏
小島央士、片岡健司、高橋 理
  あらまし 列車の運行を行うためには、列車ダイヤで時刻を定めるほか、車両、運転士、車掌の割当て計画が必要である。しかし、ひとたびダイヤが乱れた場合には、割当て計画を再度行う必要が生じる。この再計画がうまくいかなかった場合、乗務員がいないために列車を発車させられないなど、輸送混乱をさらに拡大させてしまう可能性があり、担当者には相当な経験と瞬時の適格な判断が要求される。そこで、担当者の作業を支援するために、必要な情報を担当者へ提供し、計画の提案出力を行う「乗務員運用整理支援システム」を開発している。
  キーワード 乗務員、乗務員運用、運転整理、ダイヤ予測
     
スイス連邦鉄道における
  接続を重視した新しい運行管理手法
−戦略的施策から実際の運営の場に至るまでの
  余裕時分の活用手法−
Felix Laube、Marco Luthi
  あらまし スイス連邦鉄道(SBB)は、Bahn2000というコンセプトを考案し、全土に導入してきた。これは、あらゆる主要駅での巧妙な列車の接続を実現した列車ダイヤである。しかし、その成功のおかげで、利用者が増大し、路線は飽和状態となってしまった。また、列車が遅れたときには、遅延を持ちこさないように接続を解除するが、これは、利用者にとって大きな不満となっている。SBBでは、列車運行のパフォーマンスを改善し、顧客の要求に応えるために、新しいコンセプトをうち立て、運行管理プロセスを再構築することにした。このアプローチは、日本の鉄道の運行管理手法とリアルタイムの再スケジューリングを組合せることによって、余裕時分をうまく配置、それを活用しようとするものである。
  キーワード 運行管理、余裕時分、Bahn2000、スイス