複雑ネットワークの研究動向について

増田直紀

  あらまし 現実世界に見られるグラフは複雑である。複雑でありながらも、スモールワールド、スケールフリーなどといった特徴が同定されている。そのような複雑ネットワークの研究は1998年ごろから始まった。10年が経過した現在、多くの研究者の参画によって、様々な方向へ研究が発展している。本稿では、複雑ネットワークの代表的なモデルを概観した後に、ネットワーク上の現象論やその応用可能性を述べる。
  キーワード スモールワールド、スケールフリー、グラフ
     
インターネットにおけるべき乗則 田村 瞳、内田真人、巳波弘佳
  あらまし 本稿では、様々な機能を追加しながら大規模に発展したインターネットと、昨今、様々な分野で注目されている複雑ネットワークとの関係性について紹介する。特に、複雑ネットワークの特徴の一つであるべき乗則という観点から通信の世界を見た場合に得られる、ネットワークトポロジ生成モデルや実際のネットワークトポロジ、通信トラヒックの特徴に関する新たな知見について紹介する。
  キーワード インターネット、べき乗則、ネットワークトポロジ生成モデル、インターネットトポロジ、フロー分析
     
社会ネットワーク分析は「複雑ネットワーク」を
どう扱うか?:ブランド・パワーの多モード・モデル
金光 淳
  あらまし 社会ネットワーク分析と複雑ネットワーク研究は、若干の研究様式の差はありながらも、「複雑なネットワーク」の挙動を解析しようという点において基本的には同じ関心をもつ。そもそも複雑性は1)ノードとリンクの数の多さ;2)リンクの種類の多さ;3)ノードの種類の多さから定義される。ここでは、「ブランドの絆」の社会ネットワークの「複雑性」をいかに扱い、モデル化するかを示しながら、2モードモデル、3モード中心性のモデルの可能性について論じる。
  キーワード 社会ネットワーク分析、複雑性、ブランド・パワー、3モード中心性
     
コミュニティ抽出法とその展望
湯田聴夫
  あらまし ネットワーク構造からリンクが密な部分集合を抽出することを、複雑ネットワーク科学ではコミュニティ抽出法と呼ぶ。密につながる集団は、同じ属性や傾向をもつ集団であることが多いため有用な情報となる。古くはグラフ理論や数理社会学から近年のWebサイエンスまで幅広くコミュニティ抽出手法として全体を俯瞰し、近年提案された高速なニューマン法とその派生法を概説する。オンライン上には既に数千万から億の単位でユーザがつながっており、集団間の情報流や効果的なマーケティング法の研究などORにおいてもコミュニティ抽出法は有効と考え、その可能性を解説し、今後を展望したい。
  キーワード ネットワーク分析、クリーク、コミュニティ抽出、ニューマン法、SNS