全国における苗字の空間的遍在とその変化−失われつつある地域性− 林 利充、大澤義明、小林隆史
  あらまし 日本は世界で最も多い30万種類の苗字を持つ国である。苗字は地域の歴史・風土の影響を受けているため、その世帯数には地域差が存在し地域性の一指標となりうる。本稿では、2005年電話帳データに基づいて、苗字の空間的偏在を把握し、その偏在と人口流動との関係性について報告する。なお、その地域の苗字構成比率と全国の苗字構成比率との比較を用いて偏在性を示し、人口移動データと地利値の概念を用いて人口流動を表した。
  キーワード 苗字、地域性、人口移動、ジニ係数
     
「第3種の過誤」に陥らない住民参加のまちづくりの可能性 有馬昌宏
  あらまし 住民参加のまちづくりを推進する自治体では、PDSのマネジメントサイクルの各段階に住民をいかに参画させていくかが課題となっている。計画と評価の段階への住民参加の方法として、重要度と満足度を順序尺度で評価する住民意識調査が活用されることが多いが、この方法では重要度を過大評価して地域が抱える課題や施策の優先順位設定を誤まるという過ち、換言すれば「間違った問題を正しく解く」という「第3種の過誤」を犯す危険が高くなる。地域のマネジメントにおいていかに「第3種の過誤」を回避するかについて、AHPやコンジョイント分析などの手法とGISの適用可能性も考えながら検証する。
  キーワード 住民意識調査、第3種の過誤、CVM、AHP、コンジョイント分析
     
利用者特性による図書館利用および移動図書館運営について 木村 寛
  あらまし 本研究では、秋田市立中央図書館および、移動図書館を利用する利用者の個人特性から、図書館への来館目的、また移動図書館利用の傾向について、統計的手法により客観的に把握し、今後の図書館サービスの方向性を探ることを目的とする。また、移動図書館サービスを行うサービス地点(以下、停留点と呼ぶ)間の各経路について、停留点でのサービス時間向上の観点から、各停留点を巡回する経路についての最短経路モデルを提案することを目的とする。
  キーワード アンケート調査、多変量解析、最短路問題
     
サトウキビ生産農家の経営支援のOR
鹿内健志、名嘉村盛和、官 森林
  あらまし サトウキビは沖縄県の農業を支える基幹作物である。しかし、近年農家の高齢化や担い手不足、機械化の遅れ等から作付面積、生産量とも減少傾向にある。このような現状から持続的な地域農業を確立するために、新しい担い手としての生産法人や共同利用組織、さらに集落営農等が提案されている。これらは農地や農作業を集中させ、生産規模を拡大し作業の機械化による効率的な経営を目指しているため、効果的な農地集積計画や農作業のスケジューリングの最適化が必要である。しかし、農家はこうした管理業務に不慣れであるため、農家が利用できる支援システムの構築が必要である。
  キーワード サトウキビ、農業生産法人、GPS、GIS、携帯電話、ペトリネット、スケジューリング
     
農業の多面的機能の維持と中山間地域等直接支払制度の役割について 前田 隆、西村譲二
  あらまし 全国的な規模で進行、拡大しつつある中山間地域の耕作放棄の防止は地域の農業・農村だけでの問題ではなく、今や社会全体の解決すべき緊急課題となっている。国は農業生産活動の継続を通して耕作放棄を防止し、農業の多面的機能の維持、増進を図ることを目的として平成12年度に中山間地域等直接支払制度を導入した。本論文は、中山間地域等直接支払制度を非対称情報下における政府の意思決定問題として定式化し、その構造を調べることによって、この制度の特徴とその機能を明らかにすることを試みたものである。
  キーワード 中山間地域、条件不利地域、農業の多面的機能、耕作放棄の防止、集落協定、非対称情報、誘因両立性