最新トレーディング技術の概要 中島尚紀、二宮聡広、古井芳美
  あらまし 近年、情報通信技術の進化を生かし、高度な分析モデルや高速なIT機器を利用した電子トレーディングの利用が急速に広がっており、証券市場の参加者間での競争環境を変化させている。技術や手法は主に米国で10年ほどかけて進化しており、現在欧州をはじめ全世界に利用が広がってきている。日本でも東京証券取引所による新取引システム・アローヘッドの稼動にあわせ、証券会社・投資家での動きが活発になっている。そこで本稿では、米国での発展とその背景をふまえた上で、最近のトレーディング処理の流れ、主な手法、利用されるIT技術等の概要についてまとめる。
  キーワード 電子取引、高速取引システム、取引システム構成、アルゴリズム取引、SOR、HFT
     

高頻度データ解析:市場リスク計測手法の新展開

林 高樹
  あらまし 本稿は1日内の金融証券取引の詳細を記録したデータ、いわゆる「高頻度データ」を用いた市場リスク分析について解説する。特に、過去十年余り、高頻度データの応用分野の中でも最も研究が進んでいる実現ボラティリティ(realized volatility)を中心に、高頻度データによる市場リスク計測手法の現状や問題点、最近の展開について紹介する。
  キーワード ボラティリティ計測、市場リスク管理、ティックデータ、マーケット・マイクロストラクチャ、一日内季節性、高頻度トレード
     
最適執行理論:金融実務への応用に向けた理論モデルの構築 加藤 恭
  あらまし 金融トレーディングにおいて、執行アルゴリズムの構築は新たな研究対象として近年脚光を浴びている。適切なモデル構築のためには「本質を捉えた執行モデルの理論的基盤の確立」「実際の市場の様相と理論の整合性を推し量るための実証分析」「実務への適用方法の調査と具体的なアルゴリズムの開発」の3つの観点を常に意識する事が重要となる。本稿ではその第一段階として、適切な執行モデルに求められる性質に焦点を当て、近年の理論研究の動向について簡易的なモデルを通して概説を行う。
  キーワード 最適執行問題、流動性、マーケットインパクト、確率制御
     
金融電子取引技術革新とトレーディングシステム
松原 弘
  あらまし 高度な独自アルゴリズム取引を駆使して市場を席捲するHFT(高頻度取引)の台頭等、電子取引抜きで金融市場を語ることは、もはや不可能である。欧米市場に比べて、金融ITの展開が数年遅れる日本市場であるが、年初から稼働を開始した東京証券取引所の現物株式高速取引システムのアローヘッドは、既に国内市場参加者に大きな影響を与え市場構造変容の予感を感じさせる。金融取引電子化のプラットフォームとしての役割を担うのがトレーディングシステムであるが、その実装戦略が、運用会社・証券会社にとって今日では重要な経営課題となっている。
  キーワード OMS(注文管理システム)、EMS(執行管理システム)、FIX、最良執行、DMA(市場直接発注), アルゴリズム取引、SOR(スマートオーダールーティング)、東証アローヘッド、PTS(私設取引システム)、代替執行市場
     
金融市場に対する物理学的手法の適用とその成果 山田健太、高安美佐子、高安秀樹
  あらまし 株式市場や為替市場に代表される金融市場に対して物理学的にアプローチを行う経済物理学の手法と研究成果を紹介する。高頻度データを解析した結果、時々刻々と変化する金融市場にも物質世界と同じように普遍的な統計性があることが分かってきた。また、近年の成果として、これらの統計性を定性的、さらには定量的に再現する時系列モデルやエージェントベースモデルについて述べる。最後に展望として応用領域や金融市場以外の経済物理学の話題を紹介する。
  キーワード 経済物理学、確率過程、時系列解析、エージェントベースモデル