《モンテカルロ法》

出典: ORWiki

【もんてかるろほう (Monte Carlo method) 】

 システムの特性値などを推定するために, 適当なモデルと乱数を使って実験し, 大数の法則や中心極限定理などを利用して推測を行う方法のこと. システムに確率的な変動が内在する場合だけでなく, 確定的な問題を解くためにも使われる.

 モンテカルロ法の原理を簡単な例で示そう. 推定したい特性値を \theta \,とし, これは既知の分布関数 F(y) \,を持つ確率変数 Y \,の関数 g(Y) \,の平均値に等しいものとすれば,


\theta = E[g(Y)]=\int_{-\infty}^\infty g(y)\mathrm{d}F(y) = \int_0^1 h(u) \mathrm{d}u, \,


と書ける. ただし, h(u)=g(F^{-1}(u)) \,である. そこで, 区間[0,1]上の一様乱数 U_1, U_2, \cdots, U_N \,を発生し, 算術平均


A_1(N) = \sum_{i=1}^N h(U_i)/N \,


\theta \,の推定値とすることが考えられる. A_1(N) \,\theta \,の不偏推定量であり, 分散は

V(A_1(N)) = \frac{\sigma^2}N, \ \ \ \ \  \sigma^2 = \int_0^1 h^2(x) \mathrm{d}x-\theta^2 \,


となる. したがって, 推定量 A_1(N) \,に含まれる誤差の標準偏差は \sigma/\sqrt N \,であり, 精度を十進で1桁上げるためには, サンプル数 N \,を100倍に増やさなければならない. このように, モンテカルロ法の収束は遅いので, これを改善するための方法が種々提案されており, 分散減少法と総称されている. ただし, これらは 1/\sqrt N \,というオーダーを改善するものではなく, 比例係数を小さくするための工夫である.

重点サンプリング

 積分区間から一様にサンプルをとるのではなく, 重要と考えられる部分(h(x) \,の絶対値が大きい部分)により多くの重みをおく密度関数w(x) \,に従う乱数X_1,\cdots, \ \ X_N \,を発生し,


A_2(N) = \frac 1 N \sum_{i=1}^N \frac{h(X_i)}{w(X_i)} \,


\theta \,を推定する. w(x) \,\left| h(x) \right| \,に比例するように選べれば分散は最小となるので, なるべくそれに近くなるように工夫する.


制御変量法

 \theta \,に対するひとつの不偏推定量をY \,とする. Y \,と相関があって平均値\zeta \,が既知の確率変数Z \,のことを, Y \,の制御変量という. \alpha \,を定数として


Y_\alpha = Y-\alpha(Z-\zeta) \,


と定義すれば, Y_\alpha \,\theta \,の不偏推定量となり, その分散は\alpha^* = \mathrm{Cov}(Y, Z)/V(Z) \,のとき最小となり, 最小値は


V(Y_{\alpha^*})=(1-\rho^2)V(Y) \,


である. ここで\rho \,Y \,Z \,の相関係数であるから, Y \,と相関の強い制御変量を選ぶほど効果的である.

 定積分の例では, h(u) \,に近い関数h_0(u) \,で, その積分の値\zeta \,が正確に計算できるものを選び,


Y_\alpha = h(u)-\alpha(h_0(u)-\zeta) \,


に対して単純な一様サンプリングを適用する.

負相関変量法

 \theta \,の不偏推定量Y \,と平均値が同じで負の相関を持つ変量Z \,を利用して, W=(Y+Z)/2 \,\theta \,の推定量とする. この分散は, Y \,に対して2回独立にサンプルをとって平均する場合の分散より小さくなる. 定積分の例では, もしh(u) \,が単調な関数ならば, Y=h(U),\;\;\;Z=h(1-U) \,とするとよい.

共通乱数法

 二つの特性値\theta,\phi \,をそれぞれ確率変数X,Y \,に関するモンテカルロ実験によって推定し, 比較したいものとし, \theta=E[X], \phi=E[Y] \,とする.


V(X-Y)=V(X)+V(Y)-2 \mathrm{Cov}(X,Y) \,


であるから, {\mathrm{Cov}}(X,Y) \,が大きいほど推定の精度が良くなる. X \,Y \,の分布関数をそれぞれF,G \,とし, X \,Y \,を逆関数法で作るものとする. このとき, X \,Y \,用に別々の一様乱数列を使う代りに, ひとつの乱数列\{U\} \,を使って, X=F^{-1}(U), Y=G^{-1}(U) \,とすれば, \mathrm{Cov}(X,Y) \,が最大となる. これが共通乱数法の原理である.



参考文献

[1] 伏見正則, 『確率的方法とシミュレーション』(岩波講座 応用数学), 岩波書店, 1994.

[2] G. S. Fishman, Monte Carlo-Concepts, Algorithms, and Applications, Springer, 1996.

[3] A. M. Law and W. D. Kelton, Simulation Modeling and Analysis, 2nd. ed., McGraw-Hill, 1991.