規模の収穫

出典: ORWiki

【きぼのしゅうかく (returns to scale)】

概要

規模の収穫とは, 事業体の活動に関して規模の変化による効率性の変動のタイプを表すもので, 増加型, 一定, 減少型の3種類が存在する. 増加型, 減少型とはそれぞれ規模の拡大, 縮小により効率性が向上する事業体, 一定とは現在の規模の維持が効率性からは望ましい事業体を指す. 規模の収穫が一定の事業体を最も生産的な規模の事業体と呼ぶ. CCRモデルでは規模の収穫を一定, BCCモデルでは規模の収穫は可変であると仮定して効率性を評価している.

詳説

 事業体の規模の収穫とは, 事業体の活動が規模の変化による効率性の変動のタイプを表すもので, 以下のような増加型, 一定, 減少型の3種類が存在する.

  • 増加型 : 規模を拡大した方が効率性は良くなる事業体.
  • 一定 : 現在の規模を維持した方が効率性が良い事業体. 規模の収穫が一定である事業体を最も生産的な規模 (MPSS : Most Productive Scale Size)の事業体と呼ぶ.
  • 減少型 : 規模を縮小した方が効率性は良くなる事業体.

 CCRモデルでは事業体(以降, DMU)の活動は規模の収穫を一定, BCCモデルでは規模の収穫は可変であると仮定して効率性を評価している. 通常, 規模の収穫はフロンティア上でタイプ分けされるので, D効率的なDMUのみに定義される. ただし, D非効率的なDMUの規模の収穫を判定する方法として, BCCモデルを解いたときに得られるフロンティア上の点でタイプ分けされることも考えられる.

 D効率的なDMUの規模の収穫はBCCモデルを利用してタイプ分けが可能である. ここで, m\, を入力数, k\, を出力数, n\, をDMU数, 入力行列を X\in \mathbf{R}^{m\times n}\,(X_j\,をDMU j\, の入力ベクトルとする), 出力行列を Y\in \mathbf{R}^{k\times n}\, (Y_j\, を DMU j\, の出力ベクトルとする), 入力乗数ベクトルを \boldsymbol{v}\,, 出力乗数ベクトルを

 \boldsymbol{u}\,, \boldsymbol{e}^{\top}=(1,1,\ldots,1)\, とすると, BCCモデルは以下のように定式化される.


\begin{array}{rll}  \mbox{maximize} \quad & \boldsymbol{u}^{\top} Y_a - u_0              \\   \mbox{subject to} \quad & \boldsymbol{v}^{\top} X_a = 1,                     & \qquad (1)\\            & \boldsymbol{u}^{\top} Y_j - \boldsymbol{v}^{\top} X_j - u_0                                                  \boldsymbol{e} \leq 0,                     & \qquad (2)\\            & \boldsymbol{v} \geq \boldsymbol{0},                      & \qquad (3)\\            & \boldsymbol{u} \geq \boldsymbol{0}.                    & \qquad (4) \end{array}\,


 u_0^*\, の最小値 \underline{u_0^*}\,u_0^*\, の最大値 \overline{u_0^*}\, の符号を見ることによって規模の収穫を以下のように判定することができる.


\mathbf{(A)} \ \underline{u_0^*} < \overline{u_0^*} \leq 0\, または, \underline{u_0^*} = \overline{u_0^*} < 0\quad :\quad\, 増加型
\mathbf{(B)}\ \underline{u_0^*} < 0 < \overline{u_0^*}\, または, \underline{u_0^*} = \overline{u_0^*} = 0\quad :\quad\, 一定
\mathbf{(C)}\ 0 \leq \underline{u_0^*} < \overline{u_0^*}\, または, 0 < \underline{u_0^*} = \overline{u_0^*}\quad :\quad\, 減少型


\underline{u_0^*}\, および \overline{u_0^*}\, は以下の問題を解くことによって求めることができる.

(1) \underline{u_0^*}\, (u_0^*\, の最小値)の求め方


\begin{array}{rll} \mbox{minimize} & & u_{0} \\  \mbox{subject to} & & (1), \ldots , (4). \end{array} \,


(2) \overline{u_0^*}\, (u_0^*\, の最大値)の求め方


\begin{array}{rll}  \mbox{maximize} & & u_0 \\  \mbox{subject to} & & (1), \ldots ,(4). \end{array}\,


 DEA のモデルを以下のように一般的に定式化してみよう.


\begin{array}{rlll}  \mbox{minimize} & & \theta_a                   \\  \mbox{subject to} & & X \boldsymbol{\lambda} \leq \theta_a X_a,                   \\           & & Y \boldsymbol{\lambda} \geq Y_a,                   \\            & & L \leq \boldsymbol{\lambda}^{\top} \boldsymbol{e} \leq U,                    & \qquad (5)\\           & & \boldsymbol{\lambda} \geq \boldsymbol{0}.   \end{array}\,


 CCRモデルは規模の収穫一定を仮定し, BCCモデルは規模の収穫を可変と仮定した. (5)式の L\,U\, を様々に変更することによって, 様々に規模の収穫を仮定したモデルを記述することができる.

\mathbf{(a)}\, CCRモデル(規模の収穫一定モデル) : L=-\infty, U=\infty\,

\mathbf{(b)}\, BCCモデル(規模の収穫可変モデル) : L=U=1\,

\mathbf{(c)}\, 規模の収穫増加型モデル : L=1\,, U=\infty\,

(IRTS モデル : Increasing Returns to Scales model)
規模の小さい事業体の効率性を重視した評価モデルである.

\mathbf{(d)}\, 規模の収穫減少型モデル : L=-\infty\,, U=1\,

(DRTS モデル : Decreasing Returns to Scales model)
規模の大きい事業体の効率性を重視した評価モデルである.

\mathbf{(e)}\, 規模の収穫一般型モデル : L\leq 1\,, U\geq 1\,

(GRTS モデル : General Returns to Scales model)
規模の収穫をある範囲に限定したモデルで, BCCモデルに比べて, 規模を L\, 倍縮小する, もしくは U\, 倍する生産可能集合を許容するモデルである.

 BCCモデルの効率値(可変的な規模の収穫の下で計算される技術効率値) に対するCCRモデルの効率値(一定の規模の収穫の下で計算される技術効率値)の比によって, 規模の効率性 (scale efficiency)を計測することができる. したがって, CCRモデルの効率値(CCR\,)はBCCモデルの効率値(BCC\,)と規模の効率値(SE\,)に分解できる.


CCR = BCC \times SE\,


これは, 最も生産的な規模(MPSS)にどの程度近いかを表す指標である. また, CCRモデルの効率値に対するスラックを考慮した効率値(SLE\,)の比はミックス効率性 (mix efficiency)と定義される. したがって, スラックを考慮した効率値は, BCCモデルの効率値(BCC\,), 規模の効率値(SE\,), ミックス効率値(MIX\,)に分解が可能となる.


SLE = MIX \times BCC \times SE\,



参考文献

[1] 刀根薫, 『経営効率性の測定と改善 -包絡分析法DEAによる-』, 日科技連, 1993.

[2] A. Charnes, W. W. Cooper, A. Y. Lewin and L. M. Seiford, Data Envelopment Analysis : Theory, Methodology and Applications, Kluwer Academic Publishers, 1994. 刀根薫, 上田徹 監訳, 『経営効率評価ハンドブック』, 朝倉書店, 2000.

[3] W. W. Cooper, L. M. Seiford and K. Tone, Data Envelopment Analysis, A Comprehensive Text with Models, Applications, References and DEA-Solver Software, Kluwer Academic Publishers, 1999.